BLOG

ブログ

歯を白くすることと関係ない歯の治療「口腔内バイオフィルムの感染症治療」

バイオフィルムは、微生物が自分自身が作り出す物質によって覆われながら形成されるものです。蚕がまゆを作るようなイメージです。そして、この微生物自身が産生する物質は、総称してバイオフィルムマトリックスとよばれています。バイオフィルムマトリックスは、大まかに口腔内ではデンタルプラークと言ってもいいでしょう。バイオフィルムマトリックスは、多糖体たんぱく質(例えば、上述の比喩でいうまゆの成分)などから構成されています。では、バイオフィルム感染症とはどんな病気でしょう。

「バイオフィルム内の病原微生物が関与する感染症」と厚生労働省が定義しています。では、なぜバイオフィルムが厄介な危険なものとして取り上げられるのでしょう。病原菌がバイオフィルムマトリックスに覆われるので、細菌に対して直接抗生物質の効果を発揮することができないため、バイオフィルムに関わる感染症は治療が困難になるからです。歯科関係では、歯周病菌も虫歯菌もバイオフィルムで覆われていて、抗生物質が効きません。つまり、注射も服用も効果がないのです。この感染症は、口腔内においては重大な感染症なので、歯科医は十分な治療技術と知識が必要で、歯科における最大の医療行為となっております。歯医者といえば虫歯治療、歯医者といえば歯槽膿漏というわけです。ですから、プラークコントロールの行われていない歯周病治療や虫歯の治療は、治療としてありえないわけです。

私の大学時代の恩師加藤教授(故人)は、この分野の治療を通常「保存学」や「充填学」と言い、「口腔治療学」として講義していました。私は加藤教授の1966年から1967年にかけての「口腔治療学」講義ノートを大切に今も製本して持っています。今読んでも、口腔治療学の基本は変わっていません。さすがに恩師の講義です。さらに遡れば、日本に近代歯科医学をオーストラリア留学から持ち帰った檜垣麟三先生は1948年に「口腔治療学」上中下として3冊出版しています。私はこの3冊を神田の古本屋街の高山書店で見つけて購入し、今も本棚においてあります。私は檜垣麟三先生の歯槽膿漏の講義も受けています。あくまでも「口腔治療学」で歯科の医療であり、「歯の保存充填」ではないので、我々が受けた講義はまだ医療の片鱗は残っていました。