歯に付着しているプラークの細菌と舌に付着している細菌が行き来していることが研究で証明されたからには、舌クリーニングは歯面のプラークの細菌を抑制することが考えられます。そして、舌クリーニングが歯周病の治療の一つとして有効であると考えられがちでしたが、そうではなかったのです。
20代の成人で次のような実験が行われました。
– Aグループ: 歯面のプラークを完全に除去し、同時に舌の清掃も行いました。
– Bグループ: 舌の清掃だけを完全に行いました。
そして3日後、A群とB群の歯面のプラークの再付着を確認したところ、A群とB群に有意な差はありませんでした。歯面の細菌と舌苔の細菌のやり取りはあるものの、量的な変動を起こすほどではないことがわかりました。つまり、舌の清掃をしても歯周病の改善のためのプラークコントロールには効果がなかったのです。歯周病に関しては、舌クリーニングが治療に直接効果がないことが示されました。
だが、付随効果としては、以前に述べたように、舌苔の中のPg菌が産生する揮発性硫黄化合物は口臭の原因であるため、口臭対策には効果があると思われます。全身の免疫力が低下しており、かつ歯の数が少ない高齢者では、舌苔上の細菌の占める割合が大きいため、誤嚥性肺炎を防ぐ意味でも、歯面の清掃と共に舌をきれいにすることが重要です。