歯周病菌が歯肉の免疫反応に打ち勝った時に、歯肉炎は発症すると認識されています。院長は学者ではないので表現が難しいですが、歯面に毒力の少ないプラークが形成されれば、プラークが存在しても歯周組織の健康と共存できる状態であれば良いわけです。
1955年にスウェーデンのイエテボリ大学で歯周病に関する講義を受けた際、デンタルプラークは単なる敵ではなく、歯周病の危険な存在として教えられました。日本では、現在でもデンタルプラークの撲滅が議論の対象となっています。現在、PLIやPCRの基準が歯周病治療の指標であるとされていますが、その科学的根拠を証明する論文は存在していないようです。
例えば、PLI 10%がプラークコントロールの目標とされていますが、これが臨床的に大きな意味を持つとは考えられていません。プラークが赤く染められていることを知り、驚いて歯磨きを頑張り始めると、BOPの改善が見られます。これは、モチベーションにつながります。歯周病治療の現場では、このように臨床的に効果があり、患者さんのプラークコントロールの継続へのモチベーションになります。
では、歯周組織検査、プロービング、歯石除去、BOPを行う際、歯科医や歯科衛生士は、これらの処置を正しく行っており、その意味を理解していますか?
処置後の検査が終わると、通常は終了し、次は3ヶ月後に歯石を取りましょうとなります。
しかし、医療として、歯肉をよく観察する「視診」「触診」という重要な検査項目を忘れがちです。歯科衛生士の仕事は、保険の指定する歯周病検査が治療の行動の目標になっているように感じます。保険指定の検査と歯石除去、歯磨き指導を行えば歯周病が治るとされていますが、実際には担当する歯科医、歯科衛生士の技術や能力によって、歯周病の治癒に大きな差が出ます。
診査、検査から歯肉炎の消退、健康な歯肉への治癒を目指すことが、医療行為だと思います。歯石除去後に歯肉の炎症が消え、治癒していなければ、治癒に向けて何が必要かを検証することが、歯科医師としての仕事ですし、診療補助者である歯科衛生士の仕事でもあります。これが、歯科医療の本質ではないでしょうか。